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網走番外地 荒野の対決

1966年、東映東京、伊藤一原作、石井輝男脚本+監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

網走刑務所内では、仏の松っつぁんが病棟で臨終を迎える。

同じ房仲間の大槻(田中邦衛)と反町(待田京介)は、そんな松っつぁんを見舞いに来て最期を看取った後、おかまの秀(由利徹)が用意した薬用アルコールを飲んで御機嫌になる。

しかし、そのアルコールは、松の遺体を拭いた残り汁だと知り、二人は真っ青になる。

さらに、遺体を安置所まで背負って行かされ不寝番を命ぜられたり、さんざんな目に会う。

遺体は、囚人番号42番の荒熊(嵐寛寿郎)と27番の橘真一(高倉健)が掘った穴に埋葬させるのだが、いつも、受刑者たちに対し嫌がらせばかりしている看守(山本麟一)を、好いようにからかう二人。

やがて、出所した真一と秀は、道南射撃大会という催しものを見学していたのだが、その優勝者が決まりかけた瞬間、うっかり真一が自分の方が射撃は巧いと嘯いた言葉を信じた秀が、その優勝者に挑戦状を叩き付ける。

それに乗って来たもう一人の女性客(三原葉子)がおり、自分が投げるコンパクトを狙い、二人には走る馬から撃たせて勝負を決めたらどうかと提案する。

さっそく勝負が始まり、真一の弾の方がよりコンパクトの中心に当っていたので、真一の優勝と言う事になり、二人は賞品の子馬をもらう事になる。

その子馬を連れて歩いていた真一、秀の前に突然猟銃を持った栗田という男(田崎潤)が立ちふさがり、さっきの真一の優勝は、実は自分が撃った弾でもらったのだから、馬の値段を半分をよこせと言い出す。

満更嘘でもなさそうなので、取りあえず飲み屋に立ち寄った3人の前に若い男(小林稔侍)が、子馬を30万で買いたいので、牧場主に馬を見せて来て良いかと話し掛けてくる。

その後、同じ店で、あの射撃大会で勝負した鮫島(杉浦直樹)と再会、互いに陰険な雰囲気になるが、先ほど馬を持って行った若者が帰って来ない。

騙されたらしいと悟った4人は、店を出ようにも金がない。

そんな中、栗田はあっさり他の連中の目をくらませて先に逃げ出してしまったので、仕方なく真一は、飲み代のカタとして秀を店に残していく事になる。

近所の牧場をいくつか回った新市と鮫島は、権田牧場と言う所で、あの子馬を発見。

件の若者も発見したのでもめ事になりかかるが、権田本人(河津清三郎)が登場し、約束通り30万を二人に渡す。

しかし、帰り際、子馬が乱暴に扱われているのを見兼ねた真一は、半分の金を渡した鮫島に頭を下げ、金を返却して、子馬を取り戻すことにする。

かくして、真一は、同じく出所していた反町の働いていた原口牧場に身を寄せる事になる。

そこで真一は、この辺一帯の牧場主たちが権田の支配下にある事。
唯一抵抗しているここの原口(石島房太郎)が現在勤めている競り市の委員長の権利を、権田が狙っている事等を聞かされるのだった。

その後も、権田組の嫌がらせは続き、始まった競り市では、原口牧場が育てた馬に値段を付けさせまいと、権田組の客への妨害行為が始まる。

それを見つけた真一が、権田組に殴り掛かった時、どこからともなく現れた鬼熊が、権田にドスを突き付け、この場から立ち去れと命ずるのだった。

しかし、権田は、原口牧場の売れた馬を殺してしまえば、原口は破滅する事から、呼び寄せた若い刺客(谷隼人)に、用意した毒薬を原口の牧草に巻くように命ずるのだった…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

シリーズ5作目。

今回冒頭、刑務所内でのエピソードは、死人を使ったブラックなドタバタと看守をからかうギャグでまとめられている。

お馴染み42番こと鬼熊(嵐寛寿郎)と27番橘真一(高倉健)から、いいようにあしらわれているのは山本麟一だが、このとぼけた仕返しシーンは本当に笑える。

出所してからは、完全に西部劇の雰囲気。

馬に乗り疾走する健さんの姿はかっこいい。

今回、真一に同行しているのはおかまのケのある秀(由利徹)と、途中から、射撃の名手杉浦直樹と田崎潤という、敵か味方かはっきりしない怪し気な二人。

途中から房仲間の反町(待田京介)と、いつものように鬼熊がどこからともなく出現して加わる。

この鬼熊の出現は、毎回唐突と言うか、どうしてその場に彼がいるのか理屈で考えようとすると訳が分からず、御都合主義以外の何ものでもないのだが、鞍馬天狗同様、シリーズ娯楽映画独特のお約束と言う事で、公開当時は「待ってました!」と喜ばれるシーンだったのだろう。

原口牧場の娘役は大原麗子、今回もはつらつと元気の良い娘を演じている。

悪役ボスは河津清三郎、その配下に小林稔侍や細川俊夫がいるのだが、この細川俊夫という人、どちらかというと善人イメージがあった人だけに、この作品のように憎々しい悪役を演じているのは珍しい。

さらに、権田が呼び寄せた若い刺客役として、新人の谷隼人が出ているのにも注目したい。

ストーリー自体は単純明快で、悪らつな牧場主一派を、善人牧場主に味方した網走仲間たちが協力してやっつけるというものなのだが、主人公の真一が堪忍袋の緒を切る動機となるのが、今回、人の死ではなく、馬の死である所が異色。

花子と名付けた子馬を親身に世話する真一の姿に、彼の本質的な優しさがにじみ出ており感動的である。

杉浦直樹は今回も印象的な役を演じており、殺生をしないクライマックスも後味が良い。